今回は石垣島にある有限会社うえざと木工をご紹介します。
うえざと木工が展開する店舗 兼 工房- KATARIGI- は石垣島天文台のある前勢岳(まえせだけ)の麓にあり自然豊かな環境。オーダーメイドの家具や建具を製造しているほか、店舗に並ぶ製品を作っています。
店舗にはさまざまなアイテムが並んでいます。案内してくれたのは製作リーダーの西里洋樹さん。
石垣島在住のデザイナーとコラボしたカードケースやブレスレット、花ブロックを形取ったような箸置きなど、どれも洗練されたデザイン。ぶくぶく茶(沖縄の伝統的なお米のお茶)の器はテリハボクで作っているそう。
▲オーダーのあったぶくぶく茶の器、テリハボクを使用したいという要望に応えたそう
「外部のデザイナーと連携して、製品化しています。個人の方でもできるだけ要望にそったオーダーメイドの木製品を製作することが可能です。KATARIGIのショップはそういった一般の方の窓口としても展開しています」。
▲石垣島のデザイナーとコラボレーションしたカードケース
▲花ブロックをかたどったようなデザイン、精巧な型抜きをした箸置き
●完全DX化された製造現場
ものづくりを支える製造の現場を見せてもらことに。
美しく整理整頓、そして清掃が行き届いた工場がありました。
▲機械と手仕事を組み合わせて、製材・CNC加工(コンピュータ数値制御技術を使用して部品や製品を加工する製造方法)、レーザー加工など幅広く対応する
▲広々とした作業場。分業で製作している
「機械加工と手加工の両方を用いて、それぞれの良いところを活かしたものづくりを心がけています」。うえざと木工には若いスタッフからベテランまで約20名が働いていて、製造工程はすべてDX化されているのだとか。
「当社ではスタッフ全員にiPadを支給しており、完全ペーパーレス化、そしてデータベース化しています」と西里さん。
▲確認作業や工程チェックもタブレットで
▲一定期間でシフトを変え、工程の担当者を変えている▲工程表やスタッフ配置なども大きなパネルで見える化している
「スキルアップやモチベーションを保つためにも、定期的に業務内容の配置換えをおこなっています。どうしても慣れすぎてしまうとミスが起こるので、少しの緊張感を持って仕事に臨める環境づくりを心がけているんです」。
うえざと木工では2019年から製造現場のDX化を図り、今の効率性の高い職場環境をつくりました。そのノウハウを詰め込んだ自社開発システム「キーイノベーター」をはじめ、木工業界の作業効率化を図るソフトウェアを3種開発、販売もしています。
木工業化の現場の生の声から生まれた画期的なシステムで、業界の作業効率化、そしてイノベーションを起こすことを目指しているそうです。
>キーイノベーターについて詳しくはこちら https://www.kiinnovator.jp/
●島材の魅力を掘り起こしたい
“KATARIGI”のコンセプトショップをオープンしたきっかけは「島の木の魅力をもっと掘り起こしたいから」という、うえざと木工の社長・東上里 和広の強い思いがベースになっています。
今まで建具や家具の製作で当たり前のように海外や県外の木材を使用していた中で、かつて創業者である社長のお父さんが「かつて島の生活道具すべては島の木、島材で作られていた」という話で、島材に関心を持つようになったとか。
島材について技術も熟知しているトマイ木工所代表の戸眞伊さんに協力を仰ぎ、休み返上で森に入り、島材について学んだ東上里社長。島材に関する絵本や図鑑も製作したとのことです。それは未来を担う子ども達に、島材の魅力を伝え残していくことを目的にしています。
▲島の木についてわかりやすく伝えるオリジナル制作の図鑑。
「八重山には70種類以上の木があり、どれも個性豊か。私自身、島材はそれぞれ重さや硬さ、節のはいりかた、香りなど一つ一つ良さがあり、扱いづらいこともあるけれど、それが楽しいと感じています」と西里さん。島の木を利用することで、森の循環に寄与したいという考えもあると言います。「老木を伐採して使用することは、森の未来を守ることにもつながるということを、多くの方に知って欲しい。そのために、島材の魅力をこれからも発信していきたい」と語ります。
島の多様な樹木、そして島材を使ったものづくり残すために、会社全体をDX化でイノベーションしたうえざと木工。その独自性のある取り組みが、沖縄の森林・木工業界にも波及していき、森を守り、私たちの暮らしを守ることにつながっていく。そんな未来が待っているかもしれません。
■KATARIGI (有限会社うえざと木工)
〒907-0023 沖縄県石垣市字石垣1838
TEL 0980-83-3028
FAX 0980-83-3457
HP https://www.katarigi.com/