木漆工とけし の渡慶次さんはご主人弘幸さんが木地師、奥様の愛さんが塗師という、夫婦で漆器を作っている作家さんです。名護にある工房の周辺には木々が生い茂り、公道に面した立地にも関わらず、森の中にいるような静けさを感じます。
「漆器というものは漆を塗ることで中々、木の表情が見えづらいジャンル。だから今回こうやって県産材を利用していることを取り上げていただけるのはとても嬉しいんです。」県産材を使うことに強いこだわりを持つ渡慶次さんは取材のオファーをした時にこう答えていました。
弘幸さんは2001年に、愛さんは2002年に、石川県輪島市にてそれぞれ木工と漆塗りの技術を学び2010年に沖縄に帰ってきたそうです。初期は県外樹種を主に使用していたようですが、今ではほとんど県産材を使用しています。
センダン、イタジイ、イスノキ、ソウシジュ、デイゴ、ホルトノキ、ヒカンザクラ、ゲッキツ、イヌマキ、ガジュマル、アカギ、フクギ、ハンノキ、ウラジロガシ、タブノキ、クスノキ、クチナシ、ヤブニッケイ…工房にずらりと並べられた材を手に取り、「この樹種は木目がキレイなので、漆を拭き取りながら塗っていくんです(漆は何度も重ねて塗ります)。すると木目が残ったままになって、元の木の美しさが活かせるんです」「逆にこの樹種だと表面のつくりが荒いので、しっかりと塗ってつやが出るようにします」と、使う材によって素材の特性に逆らわず、活かすことが大事なんだとお話してくれました。
どの材にどのように漆を施すか、試行錯誤の日々だったそうです。さらに近所の人が時々伐採した木を持ち込んで「使ってくれ」と、通常木材として出回らないような樹種も入ってくるようで、今でも試行錯誤は続いているんだと笑っていました。しかし、そういう環境の中で仕事ができることが非常に恵まれているということも仰っていました。
「使う木材は捨てることなく使い切りたいんです」
木の器というのは陶器などと違って、必要な分だけ用意すればいいものではありません。例えば丼型の器を作るときはそれと同じ高さ、幅を持った立方体の木材を器の形に「削っていく」作業です。その過程で整形する際に出た、端材や木くずも、小皿やお箸に加工したり、木くずは肥料として近所の人に分けたりするのだといいます。そう言う渡慶次さんは普通は器の素材にならないような「洞(うろ)」がある木でも、あえて加工し作品を作ります。
食事用の器として使えなくとも、装飾用や儀式的な器として、力強い木の表情が味となって作品の存在感を際立たせます。
「意外とこういう作品が好きな方がいて、人気があったりするんですよ」そう仰る渡慶次さんの表情はなんだか子を自慢する親のような表情でした。
事業者名 | |||
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品目 | |||
素材 | |||
径(cm) | 幅(cm) | ||
厚み(cm) | 長さ(cm) | ||
乾燥(含水率) | 量(m3/枚/本) |