今回は、昭和36年(1961年)から続く工房「宮古木工芸」の2代目、与儀昌樹さんを紹介します。
宮古木工芸では県内で唯一、三線の材料である県産の木材・リュウキュウコクタンの買いつけから製作、販売、そして修理を一貫して行っています。三線のほかにも、フルオーダーメイドの木工家具や小物・雑貨など幅広い製作を手がけています。
▲三線の皮はベトナムで養殖しているニシキヘビを使用している。ニシキヘビは絶滅危惧種のため、天然物は使用禁止となっており、取り扱いには正規のルートであるという証明書が必要とのこと。
代表である与儀さんは国家資格である木工家具製作一級技能士を持つプロフェッショナル。宮古森林組合にも加入しており、木工作家としての立場から、木材利用や森林管理についても意見を交わしているそうです。
毎日製作で忙しい与儀さんの工房兼店舗を訪ねてみました。
工房で真っ先に目に入るのはやっぱりリュウキュウコクタンの丸太です。
▲鉛筆のように幹の中心が真っ黒になっており、三線に使用するのはこの黒い芯の部分。硬いため、反りや曲がりが少なく、三線に最適な素材となってます。
与儀さんは「この黒い芯は、どれくらいの太さが入っているのか、切ってみないとわからないんです。三線に使用できるほどの太さを確保できるかどうかは、開けてみないとわからない。なのでコストはどうしてもかかってしまうんですよね」と話します。宮古木工芸の三線は与儀さんの祖父の代から製作されており、ファンも全国にいます。確かなクオリティを提供するために、与儀さんが妥協することはありません。
与儀さんは新しい製作にも意欲的です。最近ではスポーツのラケットの製作もしているのだとか。
▲「フレスコボール」というブラジル発祥のビーチスポーツで使用されるラケットを製作。桐材をシナ材や宮古産のイヌマキで挟んでいるそうだ。
店舗の方を案内してもらうと、自身の作品だけでなく県内各地の木工作家の作品が並んでいます。また、どれも丁寧な紹介文が掲示してあり、県内に個性的な木工作家さんがいることを教えてくれます。
「皆さん、品質の確かなものを作る作家さんです」と話す与儀さん。お客様にも自信を持っておすすめできるよう、委託ではなく全て買取で仕入れて販売していることからもリスペクトを感じます。
▲宮古木工芸が製作する三線は優良特産品として数々の受賞歴を持つ。
「宮古木工芸は元々家具や建具を作っていた木工がベースとなっていて、木工のノウハウを元に三線を作っています。木の伐採から買い付け、製材、三線工場、家具建具制作、そしてお客様の手元に渡った後のアフターケアまで、一貫して自社で行なっているのは珍しいのではないでしょうか」と与儀さんは話します。
与儀さんは、近年手に入りにくい材が増えていることを懸念して、できるだけ色んな木材を使用しているそう。「弊社は製材もやっているため、製材屋にしか手に入らないさまざまな種類の木材が手に入ります。また伐採も行なっているため『最近はあの木材を入手するのが難しいな』というのをリアルに感じます。今まで使いづらいとされていた材もできるだけ使用し、バランス良く消費していくことで、サスティナブルな動きにつながると良いなと考えています」と語ります。
今後も創業100年の木工房を目指し、沖縄唯一の三線・木工製作所として発展していきたいとのこと。
宮古島の木工の未来を担う与儀さんの活躍に、これからも注目です。
とても素晴らしいです。応援しています✨