毎年多くの木工ファンや工芸ファンが集まるイベント「沖縄ウッディフェア」が今年も開催されます!
今年で26回目という歴史のあるイベントの初回から関わっているのが「工房 島変木」の代表であり木工職人の屋宜政廣さん。
ツルッとした滑らかな肌触りと、まぁるい曲線が印象的な屋宜さんの作品たち。
今回は木工職人を目指したきっかけや、ウッディフェアにかける想いについてお話を伺いました。
経年変化を楽しめる木の魅力を感じて木工の道へ
ー 屋宜さんが木工職人の道へ進んだきっかけを教えてください。
屋宜さん(以下、敬称略)「木工職人になるまでは、電気工事から水道管工事、看板製作、デザイン会社と色んな職業を経験したんです。工房もさ、自分で建てて。仮電柱を立てて、電線を引っ張って。お金がなかったからさ、自分で作るしかなかったんですよ(笑)。」
ー え!この工房もご自身で建てられたんですか!?真夏なのにクーラーがなくてもとても涼しくて過ごしやすいです。木の家って気持ちいいですね。
▲屋宜さんが自ら建てた工房。事前に連絡を入れれば作品の見学もできる。
屋宜「そう、熱を溜め込まないし、調湿効果もあるから、クーラーがいらないんだ。木の良さを体感できますよ。そうそう、職人になったきっかけは…看板製作をしていたころかな。立体的な製作をしていて、プラスチックや金属板で作った看板の補修なんかもしていたんだけど、劣化が激しいと作り替えになってしまう。その点、木の看板は時間が経つにつれてなんだか『良い感じ』になるんですよ。木は経年劣化しない、経年“変化”を楽しめるんだと思い、木を扱う仕事がしたいって思ったんです。」
ー どこかの工房に弟子入りされたりしたんですか?
屋宜「当時は工房が少なくて、県内に7-8名程度しかいなかった。基本的な技術を学びはしたけれど、ほとんど独学や先輩方との交流で技術を磨いていったなぁ。木工は伝統がないから、当時は職人同士で模合を開いたりして技術や素材についての情報交換が盛んだったんですよ。」
子どものために作った椅子が原点
屋宜「木工職人として独立したての頃に作ったのが、このクマちゃんの椅子。息子のためにって作ったんですよ。当時の世の中は大量生産の時代で、椅子にお金をかける人なんて本当に少数だった。でも『幼い頃から良いものに触れてほしい』という思いがあったんです。値段は張るけれど、息子がこの椅子を大切に使ってくれたら嬉しいなと思って。」
屋宜「息子が成長した頃、もうクマちゃんの椅子は使ってないだろうと思い、展示見本として持っていったんです。そしたら息子が『あの椅子どこいったの?』と訊いてきて。私は『もう使ってないだろ』と言うと『あれは僕のだから!』と言われたんです。その時『あぁ、愛着を持ってくれているんだな』と、私が願っていた“物を大切にする心”が育まれていたんだなと嬉しく思いました。だから、今でもこの椅子を見ると、自分のものづくりの原点に帰れるんです。」
ー 屋宜さんが作る家具は滑らかな曲線を描いているので、子どもに安全なデザインにも思えます。でも決して子どもっぽい訳ではなく、少し北欧家具の雰囲気を感じます。
屋宜「北欧家具は私も好きなので、少なからず影響は受けていると思いますよ。特に北欧の有名な家具職人が作る椅子はもはや芸術品の域です。そこにはまるで及びませんが、自分だからこそ作れる家具を心がけています。」
ー 屋宜さんの家具は自然な木目と木そのものの色味を生かしたデザインが特徴的ですね。多少は色を塗ったりするんですか?
屋宜「いや、木に塗装することは一切していません。塗装って、なんと言うか、剥がれたら全く違う色が出てくるじゃないですか。傷が少しでもつくと、品質が落ちたように感じてしまいます。木が持つ色味をそのまま使用することで、使用感=劣化ではなく、風合いにつながると思います。実際、メンテナンスをすれば何十年と使える家具にしています。不具合があれば、いつでも無償で修理しますしね。家具を作って売って終わりではなく、家具を迎え入れてくれた人々とのつながりを大切に、これからも家具づくりを楽しんでいきたいと思っています。」
ー 貴重なお話をありがとうございます!最後に今年のウッディフェアについてもお話を聞かせてください。
屋宜「今回で26回目となる沖縄ウッディフェアのテーマは『会いに木て ~しまが育む木のある暮らし~』です。ここ3年間、コロナ禍で会えなかった人たちとまた再会できることを願ってテーマを考えました。今年もたくさんの木工房やガラスややちむんなどの工芸作家さん、フード店舗などの出展者が集まります。私が木工職人になった頃は少人数だった一人親方の木工職人も、今では若手からベテランまで幅広い層が携わっています。皆さんの暮らしを彩る素敵なアイテムに出会えると思いますので、ぜひ遊びにきてくださいね」
ー 今後の抱負もお聞かせいただけますか?
屋宜「とにかく、自分の心がワクワクすることに従っていきたいですね。お金よりも名誉よりも、ワクワクがなければ生きている感じがしないから。挑戦することを恐れず、周りにいる仲間と共に助け合いながら、沖縄の県産木材の魅力を伝えていく取り組みにも力をいれていきたいです。県産木材を使った家具ってこんなにカッコいいんだよ!と、誇りを持ってこれからも木工製作に打ち込んでいきたいと思います。」
ー 貴重なお時間をいただき、ありがとうございました!
■第26回 沖縄ウッディフェア
テーマ:会いに木て ~しまが育む木のある暮らし~
開催日:2023.11/10(金)11(土)12(日)
時間:10:00〜18:00
*初日の展示販売は10:30〜から
*最終日は17:00まで
場所:おきなわ工芸の杜(豊見城市字豊見城1114-1)
入場料:無料(一般公開)
主催:沖縄ウッディフェア実行委員会
■工房 島変木
代表者名 屋宜政廣
〒 904-2143 沖縄市知花5-24-8
電話番号 098-934-3831